救急車の粋な引きこもり対応策?を読んで呆れました

不登校情報センター公式ブログ「引きこもり居場所だより」の「救急車の粋な引きこもり対応策を聞きました」を読んで呆れました。
松田代表が目を付けている引きこもり当事者の中に「引きこもり生活のなかで、苦しくなると救急車に連絡をしている」方がいるらしいのです。「粋な引きこもり対応策」というのは、単なる「誤報」として片付けず、その日の隊の予定にあったのか、救急隊員用の訓練施設に、本人の意思を確かめた上で、ドライブのように連れ出してくれた・・・というものです。
もっとも、問題にしたいのは、引きこもり当事者の過去の行動よりも、不登校情報センター公式ブログでの取り上げ方です。
以前の時代なら「美談」として受け取られるエピソードでしょうが、今は単純にそうは行きません。現在では、高齢者増加による救急出動の増加や、軽症でも救急車を呼んでしまう市民のマナーの低下による「不急不要の出動の増加」(タクシー代が勿体無い、救急車で行くと優先的に診てくれる等々)により、救急車の供給が逼迫しており、「1出動あたり4万円の経費がかかる救急車を、海外の例に倣い有料化せよ」との声まで上がっています。
救急車は有料化すべきか(産経)

松田代表の投稿を、百万歩譲った視点で読んであげれば、「医師・カウンセラー・福祉関係者などの『引きこもりの支援に従事する専門家』以外の職業の方々にも、自身のお立場を生かした引きこもり支援は出来ます」と、広く社会の協力を呼びかけたいという意味もあるでしょう。
しかし、

これらは表立って知られることはないのですが、外出困難な引きこもりへの対応策としては貴重な対応策だと思います。救急隊の別の実例があれば教えてください。

と、あたかも救急車の積極的な活用「引きこもりで辛くなったら救急車を呼ぼう!」と、社会的に不適切な呼びかけを行っているようにも見えてしまいます。広く社会の共感を呼ぶどころか、支援団体代表としての見識を疑われ、非難を受けかねない――それは引きこもり支援活動全般や、引きこもり本人への社会的イメージの更なる悪化も招きかねない残念な投稿です。

「引きこもり支援の為なら、あらゆる手段は正当化される」とでもお思いなのでしょうか。
そう言えば「社会進歩のためなら、暴力による革命も正当化される」といった風潮が左翼にはあります。
両者に共通しているのは「目的達成にあらゆる手段を正当化する姿勢」です。
永遠の不景気や、成果主義や、格差社会や、年功序列の崩壊等の、弱者・一般市民にとって不安定極まりない社会状況下で、弱者保護や平等主義等を説いても左翼が支持されない理由の1つは、暴力革命の云々以前に、この硬直した姿勢に市民が愛想を尽かしているせいでしょう。
仮に左翼の方が、引きこもり支援団体を主宰されているなら、悪い意味での相乗効果が生まれ、本人がいかに隠し否定しようが「正しい活動をしている我々に周囲が協力するのは当然」という居丈高で独善的な雰囲気が滲み出て、心ある真っ当な協力者は現れないでしょう。それよか協力を申し出るのは「とにかくNPO活動と関わって経歴に箔付けをしたい」という怪しい人々しか寄ってこないでしょう。

万一、松田代表の文章にほだされて思わず救急隊を呼びたくなってしまった引きこもり当事者――特に「家事手伝い等」の逃げ口が無く、社会からの風当たりをより強く受けているであろう男性当事者の方々に僭越ながらアドバイスを致します。
「今や30代、40代は当たり前という、引きこもり当事者の高齢化」が指摘されている中、もし、来てくれた救急隊員が20代等、貴方より年下だったら、貴方はプライドを維持できますか? 相手が、医師やカウンセラーや福祉関係者なら「そういう仕事だから」と、比較的割り切りやすいかもしれませんが、「本来の目的外で救急車を呼んでしまった」となると、より引きこもり当事者は、自身よりも若くて力強くて人命救助のプロ・社会のヒーローたる救急隊員を目の前にしたときに、相当なプライドの危機に瀕すると思われます。

なお、一般市民の感情として「救急車を出動要請すると大音量でサイレンを鳴らしながら来るので、隣り近所に恥ずかしい」というのがあり(後日、ご近所付き合いの中で「何があったんですか?」と話題にのぼる)、この大音量のサイレンについて「それでも一刻を争ったので呼ぶ必要があった」と覚悟・納得できるか否かも、救急車の適切な使用かどうかを見分ける判断材料になるでしょう。

やはり「代表」は、アスペルガー
しかし、松田代表の投稿に登場する引きこもり当事者が「救急車が大音量のサイレンを鳴らしながら自宅まで来る事が全く気にならない」というのなら、何らかの病気や障害を持っている可能性もあり、「引きこもりの救急車の活用事例」の調査をブログで呼びかける前に、その引きこもり当事者への個別対応が先でしょう。この優先順位のあべこべさからしても、投稿「父親がアスペルガー症候群である場合どう対応すればいいのか」において、

上の3点は、アスペルガー気質を自覚する私が苦手とすることで、

との松田代表の記述の、「自身がアスペルガーであるとの自己診断(※医療機関での医師の診断結果ではない為)」は、結構当たっているのかも知れません。ゆえに記述内の

「人の感情や場の雰囲気を把握するのが苦手」「自分が関心を寄せること以外には無頓着で不干渉」

との自己分析も当たっている可能性が高いでしょう。
そうだとすると、不登校情報センターや松田代表は不登校・引きこもり支援には向いていない、とても人に勧められないと個人的には思います。
しかし、引きこもり当事者というのは「変な意味でサービス精神が旺盛」だったりしますから「自分が関心を寄せること以外には無頓着で不干渉」な人から関心を引こうという不毛な努力をする、無駄な事にエネルギーを傾注してしまう事もあるので注意が必要だと感じます。
特にアダルトチルドレンや、機能不全家庭や、毒親などの影響下で育った方は「家庭外の社会でも、合わせるメリット・必要性の全く無い人間に対して、親にしたのと同じように、合わせる努力をしてしまう事が得意」(むしろ彼らに合わせる事は、トラウマのリバイバル(再上演)で結果的に心の傷を一層深める)な点にも注意が必要だと感じます。